フェミニンさの骨頂は、ワードローブを盗むことから生まれるのです。これは逆説的ですが、そうなのです。A.P.C.創立以来、レディースコレクションはメンズテーラリングのコードを楽しみながら取り入れてきました。(アニマルプリント、グランジの再来、80年代のリバイバルなど)ファッションの「トレンド」を決めるサイクルとは関係なく、「メンズスーツ」が強力であり続ける理由は何故かを考える必要があります。一見単なる女装に過ぎないと思われそうなものは、実はジェンダーに対する固定概念を覆すエロティックな遊びであることも多く、メンズのワードローブの構造は、フェミニンな身体の一部のみを表現しているので、そこに想像の余地があるわけです。
女性が男性の衣装を着用してきた歴史は何世紀にも渡ります。15世紀に活躍したジャンヌ・ダルクは軍隊を率いる際に男性のユニフォーム着用し、当時の常識に抵抗しています。中国の伝説に登場するムーランは、家族を守るために男性に変装しました。近年の例では、1930年代に活躍したマレーネ・ディートリッヒや1970年代ではダイアン・キートンのような人物達や、また、イヴ・サローランが女性用のタキシードを天才的に着こなした象徴的な行為などが自由と平等への宣言となり、ドレスコードを再定義したのです。

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コレクションに対する4つの質問
今回のコレクションのためにイメージしたスタイルをどのように定義しますか?また、女性達にアイテムをどのように自分のスタイルに落とし込ん で欲しいと願っておられますか?
「A.P.C.は、私が若い頃から知っているブランドですので、ジュディスとジャンから今回提案を受けてとても光栄に思いました。ノンシャランなエ スプリが感じられるタイムレスなA.P.C.のアイテムは常に評価していましたし、私は時代を超えて受け継がれるワードローブという考え方が好き です。」
フェミニンさを際立たせる方法がメンズテーラリングのコードで楽しむことだと気が付いたのはいつですか?
「17歳か18歳の頃からメンズスーツを着ていました。そのような格好が心地良かったですし、ある意味、自分の理想のユニフォームを見つけた のです。つまり、女性らしさを打ち消さない両性具有的ルックです。」
A.P.C.コレクションの素材はどのように選ばれましたか?また、その素材は、あなたのスタイル観をどう表現していますか?
「今回のコレクションを通して、終日着ることが出来、かつ、ストライプポプリンや色落ちしたデニム素材のタキシードシャツ、カシミヤセーターや ワイドパンツなど、クラシックワードローブスタイルと組み合わせることができるジャケットを提案したいと思いました。また、一貫性のあるカジュ アルなシルエットとして、ダブルデニムや朝から夜まで着ることができるタキシードにも取り組みました。ミッドナイトブルーのダブルブレストウー ルギャバジンブレザーは、街でも海に出る時にでも着用できるもので、ボタンには私の家族の家紋をあしらい私の両親のスタイルへのオマージュ としました。最後に、ダブルブレストのチェック柄ウールギャバジンジャケットは、マルチェロ・マストロヤンニやウーゴ・トニャッツィが出演したイタ リア映画の登場人物や、ジーナ・ローランズやダイアン・キートンのようなアメリカ人女優のルックを想起させます。」
アクセサリーは、コレクションにユーモアを添えていますね。ユーモアはエレガンスに影響するとお考えですか?
「アクセサリーやジュエリーは、私がジュディスやジャンと共有している美食家のライフスタイルへのオマージュとなっています。私達の友情の根底にあるものは、好奇心と、人生における良いもの、美しいものへの愛だと思っています。」 -
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